【新訳】かちかち山
むかしむかし、おじいさんの家屋の裏に、一匹のタヌキが住んでいました。
このタヌキは、タだけでなく、モラルだとか致命的なモノもぬけていて、おじいさんが畑で働いていると、
「やーい、ヨボヨボじじい!ヨボヨボじじい!」
と罵詈雑言を振りまき、夜になるとおじいさんの畑からイモを窃盗していくというルパン三世を彷彿とさせる神出鬼没さでおじいさんを翻弄していました。
しかし、仏の顔も三度まで。単なるじじいに過ぎないじいさんに至っては三度どころか何度もがまんしてきました。しかしついには激おこと化し、堪忍袋の緒といくばくかの毛細血管がブチ切れました。
「獣の分際で人間の儂をバカにするとは。目にモノを見せてくれようぞ」
おじいさんは畑にワナをしかけました。
タヌキはゆとりでしたので、このワナに引っかかってしまい、おじいさんに捕えられてしまいました。一方、タヌキを捕まえたおじいさんはタヌキへの復讐を実況配信するにあたり2ちゃんねるかニコニコ生放送かと嬉しい悩みを抱えながら、タヌキを家の天井につるします。
「ばあさんや、こいつは性悪ダヌキだから、決して縄をほどいてはいけないよ」
そう言って、そのままゲートボールに出かけたのです。隣の町内のじじい共が勢力図を広げており、その日の対抗試合を退くわけにはいかなかったのです。
おじいさんがいなくなるとタヌキは、人の良いおばあさんに言いました。
「おばあさん、私は猛省しております。もう悪いことは決して致しません。つぐないにおばあさんの肩をもんであげましょう」
「そんなことを言って、高飛びするつもりなんだろう?」
「いえいえ。では、タヌキ秘伝のタックスヘイヴンを教えてあげましょう」
「タックスヘイヴン?」
「はい。とっても簡単ですし、年金もアパートの家賃収入も税金を逃れることができるのです。おじいさんが喜びますよ。もちろん終わったら、また天井につるしても構いません」
「そうかい、私たちは税金取られずに済むのかい」
おばあさんはタヌキに言われるまま、縛っていた縄をほどいてしまいました。その途端、タヌキはおばあさんに襲いかかって、そばにあった「こん棒」で何度も往復ビンタの要領で殴打し、撲殺してしまったのです。
「ははーん、バカなババアめ。政治家にしかできないタックスヘイヴンを信じるなんて」
タヌキはそう言って、裏山へゆうゆうと引きあげていきました。
しばらくして帰ってきたおじいさんは、倒れているおばあさんを見てびっくり。
「ばあさん!ばあさん!・・・あぁ、何てことだ」
おじいさんが慟哭を上げて嗚咽を漏らしていますと、心優しいウサギがやってきました。
「じいさん、どうしたんだい?」
「タヌキが、、、タヌキのきゃつがばあさんをオダブツにして逃げてしまったんだ」
「あぁ、あの金玉野郎か。じいさん、俺がばーさんのカタキとってやるよ」
ウサギはタヌキをに麻かりに誘いました。
「タヌキくん。山へ麻を刈にいかないかい?」
「それはいいな、よし行こう」
罪の意識の薄いタヌキはまんまとウサギの誘いに乗りました。なにせばあさんをひっぱたいて平然としているのだから、豪胆なタヌキなのです。
さて、大量の麻を刈りこんで、どこのルートで流すかと考えているタヌキの後ろで、ウサギは火打石で『かちかち』と鳴らします。そしてタヌキの背中の麻へ火を付けました。
「おや?ウサギさん、いまのかちかちという音はなんだい?」
「ああ、この山はかちかち山さ。だからかちかちというのさ」
「ふーん」
しばらくすると、タヌキの背負っている麻が、ボウボウと燃え始めました。
「おや?ウサギさん、このボウボウという音はなんだい?」
民俗学者でも科学者でもないウサギにそんなことを問うても、分かるはずはありません。ウサギは平然を装って答えました。
「ああ、この山はボウボウ山さ、だからボウボウというのさ」
「ふーん」
タヌキの背の麻は「天まで届け」みたいな勢いで燃え上がり始めました。それに気づかないタヌキをみて、ウサギは笑いをこらえられません。いくらなんでも気づくだろwwと思っても、タヌキはちびまる子ちゃんの長沢くんちみたく燃えているのに気付かないのです。
『頭が玉ねぎみたいな形だと、感覚まで鈍くなるのだろうか』ウサギは涙を堪えます。
「なんだか…あついな。…あつい。ちょwwあついwwwあついww何ぞこれwwwおたすけー!!!!ww」
タヌキは背中に大やけどをおいました。
次の日、ウサギはとうがらしを練ってローションと混ぜ合わせ、塗り薬を装ってタヌキのところへ行きました。
「タヌキくん、やけどの薬をもってきたよ」
「薬とはありがたい。まったく、かちかち山はひどい山だな。さぁ、ウサギさん。背中が痛くてたまらない。早く塗っておくれ」
「よしきた。背中を出してくれ!それじゃ塗るぞ!どりゃあっww!!」
ウサギはタヌキの背中のやけどめがけて、特製ローションを背射しました。
「ちょwwこれいかんやつww痛い、痛いwwこの薬はとっても痛いヨー!!!」
「がまんしなよ。正露丸はくさい。よく効くくすりは痛くてくさいもんだ」
そういってウサギはさらに荒々しく塗り込みました。
「痛いの痛いのー、飛んでけー。どりゃあっww」
「エンッッ!!」
タヌキは鼻血を出して卒倒してしまいました。
さて、数日するとタヌキの背中が治ったので、ウサギはタヌキを釣りに誘いました。
「タヌキくん。舟をつくったから、海へ釣りに行こう」
「あうあうあー(^q^) (訳注:それはいいな、よし行こう)」
海に行きますと、二せきの舟がありました。
「タヌキくん、君は茶色いから、こっちの舟だよ」
そういってウサギは木でつくった舟に乗りました。
「な、ウサギくん。貴殿のその発言は体の色という特徴をあげつらえたヘイトスピーチですぞwwww シバきますぞwww」
まんざらでもないタヌキは、ノリノリで泥で造った茶色い舟に乗りました。二せきの舟は、どんどん沖へ行きました。
「タヌキくん、どうだい?その舟の乗り心地は?」
「うん、いいよ。ウサギさん、舟をつくってくれてありがとう。…あれ、なんだか水か染み込んできてますぞ、コレwww」
泥でできた舟は、だんだん水に溶けていきます。
「うぉっ、こいつぁいかんですぞwwウサギさん、これはさすがに許し難いwwww助けてくれーwww船が溶けていくよーwww」
大慌てのタヌキに、ウサギが言いました。
「ざまぁみろ。バーさんを殺したバツだ。天網恢恢疎にして漏らさず。海の底で悔いるがいいさ」
「マジかよ」
やがて、タヌキの泥舟は全部溶けてしまい、タヌキはそのまま海の底に沈んでしまいました。