ドトール戦記 (お知らせ含む)
杉田玄白に先を越されたが、生まれた時代を間違えてればきっと解女体新書を編纂していたに違いありません。身体の構造という意味では、内臓的なものまで俯瞰が必要です。そのためには、死体の解剖だってするでしょう。
けれど、果たしてそこまで深いものが必要であったか?体の表面だけを詳細に記すことから始めれば医学の礎を築けたのではないか。
そう考えるに至り、自分の好みの女性だけを詳細に観察した本書「解女体新書」ができあがるわけです。身体の表層だけなので、そもそも死体ではなく生きている女性が好ましい。その役割を私が担いたかった。
そう嘆く自分を、冷静な自分が指摘します。
「それは単なるエロ本ではないか?」
自分の過ちに気づき挙兵しかねないほどの怒りに襲われたのが、定時を迎える少し前のことでした。
仕事の帰り、職場から最寄りのJR駅までバスで向かいます。しかし、ここは東北。東京のように数本に一本とか、早漏かくやな間隔で電車がほとばしっているわけではありません。一時間の1~2本の、チョコボール向井ペースとでもしておきましょう。
そのような時間があるため、たいがい駅中のドトールコーヒーで本を読んだり、ペンを片手に考え事しながら電車の時間を待っています。
つい最近までドトールコーヒーがキャンペーンを開催していました。一回来店して注文するとサービスチケットが一枚もらえます。これを7枚集めると、300円分のポイントがはいったドトール専用のバリューカード、Suicaみたいなカードがもらえるんですね。
特にこんなキャンペーンがなくても、普段から一人でリオのカーニバルみたいな勢いで行きまくっておりましたので、畢竟、カードが溜まります。
このように財布に収まりきれず、クリップで保管していました。尊師にお布施する修行者の境地でドトールに毎日毎日、来る日も来る日も居座っていたのです。ためしにこれを何枚あるか数えてみます。
7枚×5組+1枚=36枚
キャンペーン期間が7月28日~9月7日までですので、平日はほぼほぼ通い詰めていたことになります。金額にすると1,500円分のカードになる計算ですが、「そもそもこんな枚数を提示してら変態と思われるかもしれない…」となかなか店員さんに出せずにいたのです。結構、シャイですから。
そうこう恥ずかしすぎて穴があったら携帯していつでも飛びこむ所存な僕なのですが、絶えず穴へ飛び込んでいるうちにキャンペーンが終わってしまい、いま手元には何ら価値のないサービスチケットがクリップにとめられているのです。
少し肌寒くなり、秋の足音に冬の気配が紛れ込んできたこの頃。事件は起きました。街やディズニーは、いまやハロウィンの兆しで熱い経済戦争が勃発しまくっています。
私は少なくとも武道をたしなむ日本男児ですので異教の行事をローカライズにしたイベントなどに乗る気はさらさらありません。
「tric or treat?」は、訳せば「(何か)施す?いたずら?」ということで、「おかしくれる?それともいたずらがお望み?」となります。普段なら挑戦とみなしてスピリチュアル鉄拳制裁も辞さないところですが、そこは子供のすること。にこっと笑ってお菓子をくれてやるのが大人ってものです。
じゃあ、日本男児のお菓子って何かといいますと大体決まってしまうんですね。
「ひょうろくもち」一択。でもいまどきの子供たちはませてますから、もっと現代っ子なお菓子がいいでしょう。そういうモダアンな子には「よっちゃんイカ」。これだけでハロウィンは乗り切れます。
昨日も仕事帰りに、思考停止したどこぞの宗教信徒か意識失った夢遊病者な感じででトールに入店しました。いまはドトールもハロウィンに染まってしまして、かぼちゃが蔓延しています。いつもはアイスコーヒーか、神の与えたもう「クロックムッシュ」を注文する私ですが、ショーケースに目が釘づけになり、頭がパンプキンになってしまったんですね。ムースケーキというのが無償に食べたくなりました。
レジではいつものお気に入りのショートカットお姉さんが、注文を待っています。私は迷いました。
ここで彼女のイメージを崩してもいいのだろうか?いつもはバリっとスーツを着て、アイスコーヒーを一心不乱に注文するできるお兄さんだ。デキるお兄さんなのに、ときどきアルプスの少女みたいになって、チーズのたっぷりのったクロックムッシュを注文することもある。
▲とろとろのチーズとロースハムがサンドされたトースト(クロックムッシュ)
そんな私が、ムースケーキなどスイーツを注文しても許されるのだろうか。しかも、それはハロウィン仕様です。かぼちゃムースのケーキなのですが、そのムースにはかぼちゃんのランタンの顔があしらわれています。
これはカップルとか女性同士とか、親に無理やり連れてこられた小さい子供が頼むものだろう。男、というか漢が一人でご来店されて頼むものでは断じてない。それを分かっていながらも、抑えきれないほどおいしそうに見えたのです。私は勇気を出していいました。
私も東京本社時代は広報担当としてさまざまなコピーを考え、文章を書き、誌面をつくり、あまたのビジネス戦場を駆け抜けてきた人間です。商品の名前にも膨大な想いが込められ、喧々諤々の議論を経てつけられたもの。それをないがしろにすることは許されない…。
「アイスコーヒーSを。それから、、かぼちゃお化けのムースケーキをセットで」
「はーい、かぼちゃムースとアイスお願いしまーす」
名前の重みはどこに。あっさりひっくり返された上に、レジのお姉さん半笑い。後ろに並んでるストリートミュージシャンとか自称してそうなオサレ男子学生も半笑い。なに、このスイーツ羞恥プレイは。
思えばドトールはときどきこういうトリックで僕を翻弄してくる。「ももティー」の時もそうだった。「ももティー=桃ティー=ピーチティーだよな?」と思いつつも、なんか語彙力が残念な人みたいな語感を伴いながら「ももティーのSを」と注文した。そしたら「はい、ピーチティー一つお願いします」と言うではありませんか。
目からビーム出す勢いでメニューをみたけど「ピーチティー」なんてありません。あるのは「ももティー」という地下アイドルのあだ名みたいな名前の飲み物だけ。その日から僕はももティーとピーチティーの境界線を失った。
僕はドトールのレジで、なぜか空前絶後のおしおきを喰らっていた。本来なら、僕が「トリックorトリ―ト!」と叫んでお菓子を対価と引き換えにもらうのに、理不尽なトリックで殴打されていた。さらにその後、後ろのオサレさんが「ミルクレープとホットブラック」と注文しているのが輪をかけて、僕のファニーさを演出した。
私はしょぼくれながら席に座った。
おいしかった。正直、ひょうろくもちなんかより断然おいしかった。恥ずかしかったけれども。
僕はツイートで、ことのあらましをつぶやき、それから手帳に記した。いつか江戸のカタキを長崎で討つ。ドトールのカタキをソフトオンデマンドとかで果たしてやる、と誓いながら。
で、このような経緯を踏まえまして、いままでシャイの権化だった僕ですが、「同人誌」なるものをつくってみようと思います。ネットでは書けないことをずばずば書いて、中の個人情報もポロっとだして、逮捕されかねないような使い方とかまで記す同人誌。男女や男男がくんずほぐれつする絵などはありませんが、卑猥さではまったくひけをとらない、自ら発禁にするような手帳に関するもろもろを突っ込みたいと思っています。
いろいろと検討しなければならないことがありますゆえ、また随時お知らせさせて頂きたいと思います。