いろは。

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アロマテラピー

 時代そのもが病んでいるとさえ思える昨今。人々は癒しを求めている。

 何に癒されるかは人によりけりで、森林浴など自然を求める人もいれば、動物に癒される人もいる。心は開いてくれないけれど、お金で下半身を開いてくれる女性に癒される人もいる。心の安寧にはいろんな形があるようだ。

  アニマルセラピーなど、ストレス軽減、情操教育のために人と動物を触れ合わせる療法があることは知られている。しかし、僕が仕事として記事を書かなければならないとき。与えられたテーマは「アロマテラピー」だった。

 アロマテラピーとは、その名のとおりアロマ(芳香)とテラピー(療法)を合わせた造語だ。匂いによってストレス軽減、疲労回復などの効果をもつというもの。

 

 僕は、そのようなオシャレ系の雰囲気はまったくなく、大学時代「ファブリーズがあるから香水いらない」とのたまったほどの、臭い無精だった。そんな僕がアロマテラピーについての記事を!?たくさん他に適任者がいるのに!?という、今のパク・クネ大統領みたいな事態になっていた。

 

 圧倒的に女性が多い領域だけど、仕事に性別は関係がない。プロは性別もスタンスも超えたところから、記事を書く。

 と上司に説得されてプロでもないのに記事を書かされた。

 

 まずは記事を書くには、自分で経験してみなければ始まらない。自分でやってみなければ、何を取材すべきかも分からないのだから。うわべだけの取材でできた記事には、いっさいバリューがない。

 

 僕は渋谷の専門店に伺った。アロマというと、焚くイメージだろう。しかし、いまどきお香を焚くのはポケモンGOトレーナーくらいしかいないらしい。アロマは、その濃縮液であるエッセンシャルオイルを、触媒となる水に数滴垂らし、ディフューザーによって水蒸気で振りまくのだ。香り付き加湿器のようなものである。

 

 間接照明のように、オシャレに光るデフューザーを選び、エッセンシャルオイルのコーナーへ行った。アロマは香に応じて、食欲増進、気分高揚などさまざまな効果がある。そのため、どのような効果を期待しているかでエッセンシャルオイルが決まるのだ。

 

 どのような効果を期待しているのかを綺麗な店員さんに聞かれた。

「媚薬の効果のあるものってありますか?」 あまりの男らしさに自分で自分に惚れそうになったが、店員さんの答えは驚愕するものだった。

 

「ありますよ」 なんと、ハリー・ポッターに出てきてもおかしくないようなアロマがあるというではないですか。もう二つ返事で即決です。僕は家でこのお香を焚きまくって、四方八方にフェロモンをばらまき、ハーレム建造のための地鎮祭的なことをやってやる!

 

 その媚薬をつくる植物は、名をイランイランという。インドネシアでは、新婚初夜のベッドに花びらを散らす習慣があるらしい。好き嫌いの別れる匂いらしいが、そんなことよりも優先すべきは媚薬の効果だ。

 

 ちなみに、あまりの期待を店員さんが読み取ってくれたのか、ディフューザーで嗅ぐよりも直接嗅いだ方が効果は高いとのことで、携帯型のディフューザーも購入した。缶ケースの中にあるプレートに数滴オイルを垂らす。ゆっくり揮発し、その香りを嗅ぐというものだ。かばんのポケットにディフューザーをしまう。悪意に満ちた、アロマテロが起きようとしていた。

 

 その日から、デスクのディフューザーに朝からオイルをたらすことが僕の日課になった。当時、家では弟と2人で同居していたため、アロマの効果によって悲劇が生まれかねない。それを懸念して、アロマを使うのはせめて異性のいる場所ときめたのだけど、職場以外にそんな場所はなかった。

 

 このような記事を書くと「どうせ媚薬の効果なんてなかったんだろ」とかオチを読まれるのだろうと思うが、残念ながらその結果は、大方の予想を裏切ることになる。

 

 僕は昔話に出てくるような正直おじいさんばりに毎日オイルをたらしつづけた。しかし、一向に媚薬の効果は表れない。おかしい、これでは話が違うではないか。なんのテラピーにもなりはしないぞ!

 と思ったところ、僕の知らないところでその媚薬は恐るべき効果を炸裂させていたのだ。

 

 おっさんとは意味もなく早起きする動物であり、そして意味もなく早く出勤する生き物でもある。職場のとあるおっさんが、これまた意味もなく早朝に職場へ突入したところ、当直に入っていたベビースターラーメンのキャラクターに居そうな課長(女性)と酔っぱらって職場で寝ていた部長(男)が、くんずほぐれつしながらキスしていたらしい。

 誰の特になるのこれ?

 僕とは全く関係のないところが盛っていて、全く意味がない。意味がないどころか、不愉快極まりない絵ヅラで返ってマイナスなくらいである。

 

 僕の家や寝室が不夜城とかハーレムになる予定だったのに、職場のいらないところがリオのサンカーニバル。まったくもってけしからんし、職場で不逞に及んだ彼らが許し難い。

 

 この世には、なかなか思い通りにいかないことの方が、多いようだ。