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『アイデアの枯れない頭のつくり方』

『アイデアが枯れない頭のつくり方』 高橋晋平/阪急コミュニケーションズ

 

 人は、頭の中から何かが絶えず湧き出したり、ときには垂れ流したりしてしまっています。「頭隠して尻隠さず」ということわざがありますが、あれは頭の中からハミ出てしまったものが、お尻を通じて世の中に拡がっていくという壮大な意味です。わかりませんけれど。垂れ流されているものが何であれ、それが社会的に有為なものならばいいのです。ただ唯一の問題は、おおよその人が自分の頭から漏れているものに気付けない、ということでしょうか。知らず知らずのうちに致命的なものがお漏らししちゃってたりします。

 

 例えば、私くらいの人間になるとおおよそ自分の頭から何がハミ出しているか分かります。分かるけど、分かって確証を得るのが怖くて逃げ回っているに過ぎないのです。これが、桃色的な煩悩・妄想などでなく『アイデア』だったなら、どれだけ素晴らしい人生だったことでしょう。

 

 本書は新気鋭のおもちゃクリエイターである高橋晋平氏が、いかにアイデアを生み出すかについて解説した一冊です。アイデアは、天から降り注いでくるのを待つのではなく、いくつかのルールを意識すると自分で生み出せるというのです。にわかには信じがたいですね。

 

 アイデアについては、1940年に出版されたジェームズ・ウェブ・ヤングの『アイデアのつくり方』(A Techique for Producing Ideas)が必読と言えるでしょう。その中で、ヤングはアイデアについてその本質を突きます。

「アイデア」とは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない

 初めて読んだときは眼が禿げるかと思いましたが、高橋氏はこれを踏まえて、

A×B=Cという思考を解説します。

 つまり、例を本書から引用させていただきますと、

●パズドラ = パズル × RPG

●LINE = チャット × スタンプ

 という風に、ヒット商品の裏側にはアイデアが潜んでおり、それも分解すると既存の要素しか出てこないということです。つまり、アイデアをつくるためにはどんどん、組み合わせを検討していけばいいのです。

例) ●大人のおもちゃ × インテリア =TENGA

 

 そして、高橋氏が繰り返し大事だと訴えるのは、「いきなりいいアイデアを思い付こうとしてはいけない」ということ。アイデアの質は数が決めます。最初からいいアイデアを出そうとするのではなく、むしろくだらないアイデアから出していく。そうするとアイデアを出すスピードを出すことができ、ダメなアイデアを踏み台にしていいアイデアを考えることができるようになります。

 そしてなにより、10個のアイデアから選び抜かれたアイデアより、1000個のアイデアから選び抜かれたものの方が質が高くなる。数の多さは質の向上に直結します。

 

 このようにアイデアを発想するための原則を高橋氏は以下の3つにまとめます。

A×B=C
イデアは「質より量」
ダメなアイデアから出していく

 次から次へと目からウロコが飛んで行って、目が禿げるかと思いました。とはいえ、大事なのはこの原則だけでアイデアが生まれるわけではないということ。 

 A×B=Cでは、Cが新しいアイデア、Aにテーマとなるものを示します。そこにどんな要素をかけ合わせていくかは、考える人のストックに依るところが大きいのです。何を掛け合わせるかで、生まれてくるアイデアも全く違ってきます。

 

 ストックについては、元ユニバーサルスタジオ・ジャパンのCMO 森岡氏の著書『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』にて、アイデアを生み出す「イノベーションフレームワーク」を構成する一つの柱として解説されていますが、それは次の機会に。

 ストック(情報の引き出し)を強化するには、遊ぶことも大事だと森岡氏は指摘していましたが、高橋氏も同じように肯定していました。それは、例えゲームをしている時間でさえ「人を楽しませるというアイデア」に触れている経験だからです。この文章を読んで、私は意識が他界するかと思いました。勉強のためにゲームをしよう、と決意したほどです。

 

 このところAIが人の仕事を奪うとかいう事態が危惧されていますが、マインドマップはじめこのような思考法の発展は、人間が機械に対抗する大きな武器になるのではと思っています。速さ、正確さ、記憶容量では勝ち目がありません。ならば別の、人間だけの武器をもって戦うしか残された手はありません。もしくは、ストックの独創性を突き詰め、頭がファンタジーな強烈な組み合わせを出せるようになるか。

 

 アイデアを武器に。そのためには、メモやノートを駆使して自分の情報感度を高めるという努力も、また必要なのだとつくづく感じました。