いろは。

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思い出のケータイ

特別お題「おもいでのケータイ」

 私にとっての「おもいでのケータイ」は、auのSH004だった。けれども主なおもいでのありかは機種ではない。契約そのものにあった。2年縛りという契約の恐ろしさの片鱗を味わったのである。

  スマホの急激な普及にともなって、高額な機体がリリースされ、キャリア間では過激な値引き競争が勃発した。そんなタイミングで2年縛りの凶悪さがクローズアップされたのだが、「実質0円」の甘い誘いの裏で、最新の機種が売買されている。そんなころ、私は別のものとバイバイしようとしていた。そう、ほかならぬ恋人だ。

 

 当時の私は大学の頃からの交際っが延長戦に突入しており、就職によっていわゆる遠距離恋愛を余儀なくされていた。そのため私たちをつなぐのは携帯だったが、当時はまだiphoneの3GSが発売されて話題になりかけていたころ。そこまでスマホは普及していなかった。

 よほどの修羅場を除いて、男女交際は緩やかにソフトランディングしていく。その例に漏れず、メールは日に日に回数が減り、心電図で言えばピーッというあの無情な音が近づいている状態だった。

 

 けれど、私は見ず知らずの人に囲まれる大都会。そんな中で、好みの女性と交際するということは、まるで山賊とおいはぎのハイブリッドでさらってくるしかない。そしてそんな度胸があるはずもなかった。

 現状を打開するため、電話の回数を多くしようとした。そこで、あらたに携帯を契約し、彼女に機体を送った。いわば恋人専用電話である。なんという甘い響きだろう。

 甘すぎて糖尿病になるのではないかと思ったが、現実は苦かった。なんとケータイを受け取ってから1ヶ月が経過したあたり。ムエタイで言えば、お互いの出方をうかがって「さぁ、これから!」というときに、「少し距離をおきたい」と言われた。

 さて、距離を置こうにもすでに九州と東京。これ以上、距離を置くにはさらに北上しなければならない。途方に暮れる暇も与えず彼女は言った。「他に好きな人ができた」 

 もう心電図がドックンドックン図ってたのに、とつじょのピー。私の頭もピーだった。携帯の契約は2年縛り。それ以外で解約するには、1万円近い違約金を払って解約する必要がある。2年間分の料金を計算したところ、どっこいどっこい。そんな中、もしかしたら…という、今となっては釘バット等で過去の自分を殴打したくなるような一縷の思いで契約を継続し続けた。そんな私のけなげな想いが通じたのか、勘づかれたのか、携帯の電源が入れられることは二度となかった。

 

 時はたち、彼女もいまでは結婚して、子供もいるらしいと風の便りで聞いた。もう二度となることがない電話だけど、私はいまでも棚にしまっている。

 いつか笑いあって話せるときがくるだろう。そのときは思い出として、いろんなことを教えてあげようと思っている。どんな仕事をしていたか。どれだけ大変だったのか。どれだけ成長したのか。あれからどれだけ大人になったのか。

 どれだけあのとき辛かったかということ。どれだけ好きだったか、ということを。

 

 

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