Personal Organizer Lab.

システム手帳・文具中心の雑記系ウェブログ。

手帳の死に至る病

 手帳やノート、本、つまりは紙の束が大好きで、足を棒にして理想のそれをさがしていたら、違う卑猥なところが棒になっていた。幸いにして、そんな性欲の権化みたいな性的興奮を抑えきれないような状態にはなっていない。人間的知性と理性をもってして、道端におっぱいと手帳が落ちていたら、よほどしわくちゃか奇天烈な形・色をしていない限りはおっぱいを選ぶだろう。

 

  それにしても、最近、手帳やノート、文房具関係のブログも多分にのぞかせていただくのだけど、はたと考え込んでしまった。

 いろんなものをみて興奮を覚え、下半身に地鎮祭でも必要になるかと思われる状態に至ったわけだけど、本来の目的はなんだったのだろう。

 

 手帳は情報整理であるし、メモは覚え書きだし、ノートはインプット・アウトプットのためにある。重要なのは何をどう使おうが、その結果、どのような情報や知識そして思考がもたらされたのかではなかったか。

 

 気の利いたレイアウトや美しい写真で文房具・考具を紹介するブログはたくさんあるけれど、そのおすすめする手帳やペンを使った結果どのようになったのか、が全く見えてこないのだ。これに似たような状況を大学時代に見たことがある。

 忘れもしない、居酒屋にて。

「あの禁煙グッズはよかった、効果があるぞ!」などとたばこを片手にハーバード教室みたいに白熱している様子を見ながら、「あぁ、ニコチン依存って病気なんだな…」としみじみ思った。

 

 ものすごくきれいな絵を描く人がいる。そのようなレベルの絵を自分でも描けるようになりたい。そう思ったとき、その人がどのようなスケッチブックにどのようなペンで、どのようにデッサンをとる基礎の練習をしたのか気になる。

 

 会社で誰も思いつかないようなとても斬新な企画アイデアをぶちあげる先輩がいる。頭の中はどうなってるんだろう?ノートとか手帳みせてもらいたい。

 

 本来、考具という意味ではこういった流れが主流であるはずだ。ところが現状では、「これがこういうときに便利」、「これがこういう使い方ができておすすめ」という文房具それ自体が好きな人も多く、情報はお役立ち情報としてはたくさん入ってくる。これはこれで、ちょっと便利なペンを見つけたり、用途にあったレイアウトを知れたりもする。

 

 でも結局のところ、「それらを自分がどう使うのか」が全てだ。

 

 ソムリエであっても、評論家であっても、コンサルタントであっても、彼らはその結果に何も責任は負ってはくれない。プロではないし、いろんな肩書きは違えど、つまるところ「文具好き」の一言で片付いてしまう人たちなのだから。何も結果を残していないのだから、この文具はこういう使い方ができて便利、以上のことを言えるわけがない。

 

 実績のある人の文具紹介は、その成功の一部を担保にする。例えば私で考えてみよう。私の場合は実績というより、「さるさ家開闢以来最大の不良債権」とまで言わしめるほどの殊勲ではあるが。

 

 私のようにフランス書院の期待の星みたいな文章を目指すならば、私と同じような文具の使い方をすればいい。私がそうして、末代から祟られそうな文章を生み出しているのだから、参考になるだろう。しかし、参考にしたところで降ってくるのは汚名ばかりで、人間として大切な何かを失うことは覚悟しておいた方がいい。

 

 大学時代、友人であった文芸サークルの会誌に寄稿を依頼された。私はその文芸サークルとは一切関係なかったにもかかわらず、ふたつ返事で答えたのだ。しかし引き受けたはいいものの、私には文芸というものがわからない。なので何を書いていいのか、それ以前になぜ引き受けたのか途方に暮れてしまい、仕方がないので放っておいた。

 

 ところが、締切が迫ってくると、そこかの無人くんとかお自動さんの取り立てみたいな勢いで友人部長からせっつかれた。しかたがないので日米文化の比較論をテーマとして書き上げた。当時のノートが手元に残っているので噛み砕いて説明しよう。

 

(ノートより) ghost in my room

 当時、耄碌系だった大家さんが、管理しているアパートすべての部屋にケーブルテレビ設置と費用負担を大盤振る舞いした。家賃は現状維持で、その中にケーブルテレビ代も含まれるという、業者に騙されたのではないか?と心配したくなる設定だった。

 

 その中にディスカバリーチャンネルというのがあった、早い話がアメリカのサイエンス番組だ。その中で異彩を放っていたのが「GHOST LAB」という心霊番組だ。けれど、心霊番組とはいってもサイエンス番組、しかもアメリカ。日本の番組のようなものを想像してもらっては困る。

 

 心霊現象が多発する現場に、とほうもないサイズのトレーラーで乗り付け、中から金剛力士像とフレディマーキュリーをハイブリッドしたような逸材や、セクシーな美女などキャラクターに富んだメンバーが降りてくる。

 現場で音声をデジタル録音するとEVPとよばれる電子音声現象、すなわち正体不明の声が混じるのだ。それをトレーラーに積んだ危機で解析し、不可解な音声を明確にする。

 

「おい、音声がとれたぞ!一度、帰還せよ!」

インカムで告げられると、心霊スポットに散開していたマッチョ系メンバーが集まってくる。そこで解析係の青びょうたんみたいな人が、解析した音声を聞かせるのだ。

 まずその幽霊の音声がすごい。ふんだんに個人情報が盛り込まれているらしく、ピー音が入るのだ。しかし、直後にマッスル兄弟がブチ切れてトレーラーから飛出し、現場へ再度突入していったのを見る限り、幽霊のピー音の中には放送禁止用語的罵詈雑言が含まれていたのだろう。

 

 ブチ切れて再突入を果たしたマッチョ兄弟は、音声の録れた現場へ一直線。入り込むや否や、青スジ立ててピー音の嵐。どうやら興奮して幽霊に放送禁止用語的罵詈雑言を浴びせているらしい。念仏唱えるとかってレベルじゃない。そして畳み掛けるように、なんとそのピー音の嵐で現場の様子はフェードアウトし、管理人へ報告するシーンに移っていく。サイエンスもくそもない。

 

 この番組、ほんとに書き出せば本一冊になるくらいおもしろい。見た直後には、人を化かす幽霊が出るスポットに行って、Shut the FUCK up!(黙れ、ボケ!)みたいなことをわめきたくなる衝動に駆られる。

 日本なら念仏唱えて「それでご覧いただこう」、「もう一度」とかわびさびに富んだ控えめな見せ方なんですが、この番組じゃ斧もってって振り回したりするからね。

 こんなメンタル構造から違う人種と戦争したじいちゃんたちすげぇわ。

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 というような内容の論文を仕立てあげ、部長くんの目を通さずに印刷原稿に放り込んだところ、風林火山みたいな空気を醸し出して怒っていた。

 

「文芸部部長としての僕の立場はどうなる!完全に顔を潰された!」

と激おこぷんぷん丸だったんですが、潰すまでもなくお顔、潰れてるよとは自分の顔も同じで言えなかった。

「最初は君の守護霊と対談してYoutubeに流した様子を情緒的に綴ろうと思ってたんだ。それよりマシだよ」と励ますのが精いっぱいだった。

 

 何の話をしていたのかさっぱり分からなくなってしまったけれど、私は手帳やノートを使って何か自分の考えを形にしたいと思っている。

 

 それはいまのところこういった文章という形をとっているんですけれど、手帳や文具のブログっていうのはそれを使った結果を形に残してこそだと思う。そして最近は、読ませるテキストブログっていうのをあまり見かけなくなった。だからこそ、そういうブログを目指したいと思って、今日も卑猥図書の研究に余念がない。