Personal Organizer Lab.

システム手帳・文具中心の雑記系ウェブログ。

基礎講座9.ブン投げて町へ出よ

 ここに1冊の本がある。 『怖い間取り』松原タニシ

 事故物件に住みます芸人として活動してきた著者が、これまでの体験及び事故物件にまつわる取材をまとめた1冊だ。パッとしない芸人だったが、事故物件との出会いにより生きていることを実感できるようになった、世界が広がったという。

  この本、全ての物件のレポートに間取り図がついていて、非常に面白い。芸人といえば、芸風という言葉で括られるオリジナリティがものを言う。言葉にすると一言だけれどもレーゾンデートルアイデンティティなどが深く混ざり合ってオリジナリティを形成する。何がどう自己形成にいきてくるのか分からない。まさか事故物件が、自分の芸の肥やしとなって書籍を上梓し、世界を広げてくれるようになるとは思いもしなかっただろう。ことごとく意中の女性のストライクゾーンに収まることができず、そのゾーンすら拡大できなかった私としては、色んなことを感じずにはいられなかった。

 これまで基礎講座として、手帳を使うための基礎力養成をテーマとして記事を書いてきた。しかし、ひとつだけ注意喚起しておきたい。そのための教訓が、この本にも詰まっているように思うのだ。

 

 確かに手帳を使いこなすためには、いくつかの技術がある。それは基礎講座の中でも触れているような、いわば最低限のスキルだ。もし発展させようと思えばどれだけでも盛ることができるだろうし、いくらでもフォトジェニックになっていくだろうと思う。

 今回、夏休みに乗じて実家のある九州へ帰省した。故郷で夏を過ごす間、仕事的なものは一切してたまるかという強気の姿勢で、パソコンにすら向かわなかった。その分、車で出歩き、おいしいものを食べ、色んな写真を撮ってきた。島で悠々と自由に暮らす猫が羨ましかったし、巨大でぽつんと島に佇んだ風車が放つ違和感に恐れおののき、緑に囲まれた絵本専門店に永住したいと思った。

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 手帳を使いこなすというのは、手帳それ自体の見栄えを良くすることではないのだと思う。手帳を持って外に出て、いろんな体験を通して自分の世界を広げていく。これが重要なんじゃないだろうか。

 マステの貼り方だとか、イラストの有無だとか。それを楽しみながら一日を振り返ることもいいかもしれない。しかしそのような楽しみ方でさえ、振り返るに値するような充実した一日を過ごしていることがベースとなっていることを忘れてはいけない。

 

 けれども、毎日がそんなに充実しているわけでもない。それはあたりまえだ。毎日充実していたら、私たちの寿命はぐっと短くなることだろう。充実した一日を過ごし、自分の中の世界を拡げるための材料を集めるには当然充電する時間が必要だ。それが資金を溜めるための仕事の日々であったり、やる気が起きずぼーっと過ごす日々なのだ。それらがあるからこそ、私たちは反動や湧き出るハングリー精神をフル回転させて、いろんな体験、アクティビティに取り組むことができる。男なんて一発ごとに充電時間が必要であり、人はその充電時間を賢者タイムと称して奉る。

 

 だから、あまり手帳の使い方を追求するための時間は取らない方がいい。そのような、いわゆる手帳会議なんて何かを買ってしまったとき、不便で揺るぎないストレスがついて回っているときなどで十分だ。一ヶ月に一回あるかないかくらいでいい。手帳の使い方、些末な手順や記入法開発にあれこれ没入するよりも、少しでも自分の生活そのものをアクティブにした方が手帳の進化は早いことは疑いようがない。

 

 何もない日を、無理やりに装飾して残した一日は未来の自分に何も与えない。書き方は簡素であっても、いつまでも心に刻まれるような感情を感じた日の記録は、未来の自分に何かを与える。抽象的なようだが、それは確かなのだ。手帳の使いこなしもカスタムも、鍵はそこにある。つまり自分をどうマネジメントしているか。

 それはもちろん仕事のことだけじゃない。自分がやりたいと思っていることをどれくらいの割合で実際に取り組めているのか。行きたいところのどれだけに足を踏み入れたことがあるか。マネジメントの対象は自分の仕事だけなんかの小さな範囲でなく、自分の人生そのものである。自分の人生を豊かにするために、自分の支配下・コントロール下に置く。それこそがライフをハックするライフハックの粋ではなかったか。

 

 あまり手帳の使い方、などというものにハマり過ぎてはいけない。それだけあなたの手帳が魅力的になる時間を捨てているようなものなのだから。最低限のスキルを獲得したならば。それはもうある程度手帳を使えるということだ。だからその手帳を持って積極的に外に出かけなさい、というのが当面の心構えだろうと私は思う。書を捨てよ、町へ出よ。私個人としては、性的アクティビティが危険水準な位置で圧倒的に不足しているので何とかしたい。