Personal Organizer Lab.

システム手帳・文具中心の雑記系ウェブログ。

入院と文具

下半身に許し難い痛みを覚え、完膚なきまでに入院することとなった。いま、私は病室にいる。

 

 

これが不治の病で、甘く切ない恋人とのやりとりでもあればもはや「恋空 おっさんver.」みたいな雰囲気も醸し出せよう。

 

実際のところ、空手の稽古中、近年稀に見るものすごいタイミングで、教え子の頭に蹴りが入ろうととした。あまりに前代未聞のタイミング過ぎて蹴りを止めたのだけど、そもそも人間の体は高い所を蹴る動きを止めれるようにできてはいない。

結果、軸足がガクッと折れ、右膝の前十字靭帯を伸ばしてしまった。

 

 

そう、伸ばしただけである。伸ばしたもののつながってはいるということで、装具をつけて安静にするよう整形外科から指示された。

こともあろうに私は「装具をつけてれば多い日も安心」と乱心を極め、思い切りジャンプスクワットしたのがとどめであった。

 

 

繋がっていた靭帯は容赦なく切れ、しばらくは「切れててもそれなりに蹴れるな」と血迷った生活を送っていた。なにせコロナ禍でマスクも不足。ありとあらゆる命に別条のないオペは後回しにされたのである。

 

思い出したように手術の話がとんとんと進み、今週の月曜から入院して、火曜にオペをした(された)。

手術前にオペの概要を説明されるのだが、皿の付近から骨付きで屈強な靭帯を1cm幅くらいで切り取り、骨に穴を開けてそこから通し、チタンボルトで固定して前十字靱帯を再建するという、プチ公共工事のような内容だった。

 

抗えない眠気にも抗ってしまうのが私である。全身麻酔も何の薬品をどういった手順で使うのか。それがわかっていれば、ある程度耐えることも可能なのである。

 

可能なはずなのだが、気づけば手術は終わっていて、下半身に看過し難い痛みを覚えた。あきらかに手術する前よりも悪化しておる。麻酔から覚醒した私は憤ったが、まさかここから「また穴を塞いで張った靭帯を取り除いて前にもどしてくれ。さぁ麻酔を!」なんて言えるような肝は持ち合わせていない。

 

みんなが社会にでてあくせく働く中、私は病床で寝たきりであった。だが決して楽をしていたわけではない。足が動かせないのだからトイレもままならず、尿瓶で済ませる。あろうことか日中の担当看護師さんは美人であり、その人に下半身の全てを曝け出してしまっている。なによりも恐ろしいのは、職場に入院しているということだ。

 

わかるだろうか。同僚に性器を持ち抱えられて尿瓶にあてがわれるあの空気を。それは看護師からすれば何百本と診てきた男性器だろう。しかしこちとら一期一会で曝け出しているのである。何かの刑罰だろうか、と錯覚してしまうほどの辛さである。

 

 

病院とはいろんなものを見つめ直す場だなと思う。自分の人生、外の風景、忙しい毎日。そんなものを一歩引いたところから見つめられる。

おそらく大半の人が人生の最後を迎えるだろう場所で、私はボケっと寝そべっている。

 

意外と役に立つのは、手帳ではなくコピー用紙だ。S20で気ままに思ったことを書いてみる。紡ぐことばのどれもが、日常からは生まれてこないような雰囲気を纏っている。

 

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本を読み、思ったことを書く。疲れた時は青い空を眺める。多分、この透き通るような青のどこかに、いなくなってしまった親父もいるんだろう。

 

今はコロナの関係で見舞いもできない。当然、家族も来ない。そんな中、何を病室で思い、どう過ごすのか。それを受け止めてくれているのは紙だ。

 

 

もちろん手帳も持ってきてはいるけれど、病室で過ごすにはあまりに型にハマり過ぎている。

 

ここには何もない。だから何でも見れる。

それを受け止めてくれるのは、真っ白な紙とそれに思考を刻み込むペンだ。この二つがあってよかった。

 

 

へんな話だけど、有意義な入院生活にしたいと思う。