いろは。

手帳・文具中心の雑記系ウェブログ。

喪失論

 学校っていうのはいつだってそうで、大事なことは情報としてしか教えてくれない。両親の教育は、学校と異なり「知識」を教えてくれる。けれど大人になってからしかそのありがたさに気付けないという点が致命的だ。確かなことは、とかくこの世は生き辛いということ。

 中学校ではノートをとらされ、そのチェックも受ける。提出物として成績にも反映され、ひいては高校受験にも影響してくるのだから重大だ。けれども、ノートは黒板を写させたり、プリントを貼らせたりする一方、その効用や使い方などは教えてくれない。ただただ作業を強いる。ノートというものに興味をもって色んな使い方を知ったいま、あの頃はもったいなかったなと思う。

 

 先生や大人たちは、みんな「夢を持て」という。小学校の教室、黒板の上には夢や希望といった書が飾ってあった記憶は誰にでもあると思う。幼いころから、夢や希望を持ち続けて生きることこそ正しい姿と教え込まれてきた。けれど夢や希望とは何なのか。それが持てなかったときや叶わなかったときにどうすべきなのか。そんなことは教えてくれない。だから夢を失ったとき、僕らは途方に暮れるし、身の振り方がわからなくなってしまう。

 

 それもそのはずで、「夢を持て」と鼓舞してくる大人自身が、夢をもっていなかったりする。それが大半だ。もしくは、持っていたが夢を失い、その対処が最終的に分からなかった人たち。そしてごくごく一部の、夢を実現した人。どの人も、夢を喪失したときの穴の埋め方を知らない。だからお題目のように「夢を持て」というばかりで、いざ夢をもったならあとは野となれ山となれという方針を取らざるを得ない。

 では具体的にどうすればいいのか?それは夢が打ち砕かれてから模索すべきもので、その結果、答えがあるのかどうかも分からない。

 

 厳密に分ける必要もないかもしれなけれど、僕の価値観では、願望、目標、希望、夢はそれぞれ全く異なるものだ。願望は「あわよくば」、目標は「自力で達成したい」、希望は「根拠はないけど叶いそうな予感」。で、夢は、有限でハードルはとても高いけれども何が何でも実現したい自分のなかでの絶対的な目標。だから独特のエネルギーを生んでくれる存在だったりする。有限でない、つまり人生をかけて追い求めることができるのは、目標に分けられる。

 

 夢っていうのは、夢であれば夢であるほど儚い。だからこそ残酷だ。自分の勝手な位置づけに過ぎないとしても、夢を持て、なんて残酷なことをさも人間的に正しいことであるかのように教えることはできない。すくなくとも、その残酷な現実と共に教えるだろう。

 

 パイロットになりたかった。航空大学校、自社養成のルートがあった。ANAの自社養成パイロット採用試験、もうここに決めるしかないという段階に来て一本に絞った。けれどそこで終わってしまった。

 基本的に自社養成試験は一回しか試験を受けられない。航空大学校も試験回数に限りがある。なんでそんなに厳しいのかというと、身体基準がとても高い水準で、適正も独特だからだ。自分にできることと言えば、数学や英語の試験で落ちないよう、勉強して試験に臨むことくらいだった。努力が許されるならいくらでもする。しかし、それが許される環境にないというのは結構なことだ。なかなかこういう環境はないように思う。

 

 司法試験でさえ、極端な話をすれば受験制限を使い切ってしまった場合、改めてロースクールに入りなおすことで受験資格を得ることができる。これは人生を棒に振るような現実的でない期間と費用がかかる。けれど不可能ではない。

 自分の場合、宝クジでも当たれば海外で自家用機の操縦ライセンスをとることができる。けれどホンダジェットをもってるわけでもないのに、そんな高額なライセンスをとってどうしろというのか。エアラインパイロットと夢は、砕かれてしまっている。

 

 スポーツ選手もそうだろう。野球なりサッカーなりでプロ選手を目指した人も多いだろう。けれど年齢を重ねるにつれて体力はピークを過ぎれば衰えていくしかない。これも有限な夢だと思う。

 

 何事においてもそうなのだけれど、夢は挑戦し続ける、諦めないことなんて簡単で、諦めることの方がよほど難しい。本当に苦しいのは、試験やレセプションに落ちた過去のことなんかでなく、これから先、叶うことがもうないことを知ること。そう簡単に代わりがみつかるのなら、あんなに夢中になんかなっちゃいなかったのに。

 

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 だから、最近の幸福を引き寄せたり、なりたい自分になれたり、夢を実現できるようになるっていう手帳ツールや術っていうのが苦手だったりします。

 確かに手帳は便利なツール。やることを明確にしたり、スケジュールで余白時間を洗い出したり、効率的にしなきゃならないことをこなしたりできます。でもそれで叶うほど単純なものだったっけ。こんなに引きずってる自分の夢って。

 もし叶えたのなら、それは手帳とかその使い方じゃなくって、頑張った自分を褒めて認めるべきだと思います。

 

 でもま、それだけ周りが見えなくなるほど追いかけちゃうのが夢だから、そういう系統のものが売れるんでしょうね。巷にあふれるわけだ。結局、夢って魔性の魅力をもってるよね、とまとめておくことにします。