Personal Organizer Lab.

システム手帳・文具中心の雑記系ウェブログ。

ビジョンから導かれる、とある判断

 むかしむかし福岡に、天神Styl〇というメイド喫茶がありました。当時、就活や卒論を控えたさるささんは、九州にとうとう上陸したメイド喫茶に戦々恐々としつつ、鬼のように通っていました。

  当時はクラシックなメイド喫茶だったのですが、久々にホームページを覗いてみると当時の面影はもうありませんでした。彼ぴっぴとか言ってあひる口つくってそうな雰囲気のキャストになっていたのです。もうこうなるとメイドもくそもなく、ノンアルコールキャバクラ。非日常もなにもなく、そこにはディズニーに遠く及ばない、ギャルがメイド服着ただけの動物園になっているのです。

 

 そもそもメイドとは、狭義の意味では個人邸宅に住み込みで、食事、掃除など家庭内作業を行う使用人。広義ではホテルの客室担当などまで含みます。いわば仕事でないプライベートの環境を整えてくれる職種なのです。

 あなたは仕事から自宅へ帰ってきました。職場ではプリキュアを彷彿とさせるお局さまたちにいびられ、終わりの見えない仕事を上司から振られ、精も根も尽き果てています。一刻もはやく食事をとって、ゆっくりお風呂に浸かって、本でも読みながらふかふかのベッドで寝たいとしましょう。

 

 そんな矢先においしくなーれとか唱えさせられ、萌え萌えキュンとかリピートアフターミーみたいなノリで詠唱させられたらどうでしょう?やっかましい!と張り倒したくなりませんか?実際には訴訟とか怖いので張り倒さないにしても、心の中ではジャイアントスイングで彼方まで投擲したいような衝動に駆られることは間違いありません。そんな頭がぱっぱらぱーな絡みではなく、さりげない気配りで癒してほしいのです。

 私はいまのメイド喫茶業界に一石を投じたい。

 

 かつて私は東京都の国立市に住んでいました。文教地区で閑静な街並みはとても落ち着いて。いまでも都内に転勤になったら絶対に国立に住もうと思っているほどです。ここで私はメイド喫茶を開業したかった。

 

 まず、女子大生をターゲットにした採用面接を開催します。この国立は一橋、津田塾、国立音大とお嬢様が多いのです。そこから、過酷な倍率を誇る採用面接を行います。もちろん時給は千円突破のそれなりのお値段です。そうしてキャストを私の独断と偏見で選抜します。

 お店の内装はクラシックでくつろげる雰囲気に。BGMはオルゴールクラシックのようなさりげないものです。間違ってもエロゲソングとかをWowWowしないように配慮します。フードやドリンクは、ルノアールの少し下あたりをポジショニングします。

 

 そう。私が作りたかったのは、あくまで喫茶店メイド喫茶〇〇とかでなく、「ゼッタイあそこのマスター自分の趣味で店員採用してるって」ってひそひそ話されるような喫茶店なのです。だから、普通の会話はしたとしても、オムライスに向ってビームを放てるような人間離れした店員はいません。かわいいひとばっかり採用してメイド服を制服として強要しているだけの喫茶店

 その一方で手帳やペンや、セレクトの本や岩波文庫を売る。そういうお店をつくって、大学生活で荒野をさまよう男子大学生たちから金銭を巻き上げたかった!そしてときどき、気まぐれでイベントを開催するのです。手帳の使い方講座とか、愛好家の集い、オフ会などなど。

 

 私はキャバクラとかに行かないタチなのであまりキャバ嬢という存在の実態を知りません。もちろんピンキリなのでしょうが、それが歌舞伎町であれ銀座であれ、トップクラスの人たちは幅広い客層に合わせられるよう社会や政治、経済の勉強を欠かしていないのではないでしょうか。

 なのにメイドが脳死していつまでもオムレツに萌え萌えビームとやらを放ち続けるだけでそれに群がる人々がいるならば。間違いなくこの業界は衰退の一途を辿るでしょう。今やパンツをはかないしゃぶしゃぶ屋がないように、メイドがいる喫茶店もなくなってしまうのではないでしょうか。

 

 だから、誰かが立ち上がらないといけないのです。マンガを発展させ、アニメの分野を切り拓いてきた。その日本の一員として。

 

 かつて私の愛する国立に、とある格安レンタルDVD店がありました。「店長おすすめ!」というシールが貼られていた映画は、どれもとても面白く。興味なさそうなストーリーであっても再生がとまるころには魅了されている。はずれのない、確かな審美眼を持った店長の太鼓判だったのです。

 けれども時の流れか。今はもう、そのレンタル店はありません。確かなセンスをもった店長が、いい映画を世に広げるひとつのチャンネルが失われてしまったのです。

 

 そのお店のAVコーナーでは、徹底して女優 範田紗々さんの作品にしか「店長おすすめ!」タグがついていなかったことを、今でも懐かしく思い出します。あまりにも気骨があり過ぎるおすすめでした。

 確かなセンスと、それを世に広げていく信念。それはメイド喫茶経営に必須の要素なのかもしれません。だから私は決意したのです。それは難しくて私には無理だから、どっちかっていうとメイドの方になろうと。

 どっとはらい