胃袋を、つかむ。
狙った男と結婚するには胃袋を掴めばいいらしい。これはいいことを聞いた!と思ったけど、清楚な黒髪乙女と結婚したい、そのために出会わなければと思っている僕にはまったく役に立たない情報だった。
僕は、おっさんの胃袋をつかむことに成功してもどうしようもない。途方に暮れるのが関の山。おっさんに胃袋つかまれておっさんが恋する。それは幸せな光景ではなく、プレデターとかのワンシーンみたいな悲壮感さえただよう画になることでしょう。
そもそも、胃袋をつかむというけれども、現代社会でのそのハードルはけっこう高いと思うんです。
ちょっと外にでればサイゼリアで豪遊できるし、とんかつ屋さんやカレーもおいしいところが多い。お店でなくとも、コンビニの惣菜も最近は充実しています。
そんな環境の中で胃袋をつかむ。むしろ水月あたりに指を差し込んで、食道とか噴門のあたりを物理的につかむほうがまだ簡単なのではと思ってしまいます。
一昔前ならちょっとしゃれたような料理とかでつかむこともできたかもしれませんが、今では伝説の感さえ漂っています。そんな僕が熟女に胃袋をつかまれた。
彼女の名前はステラというんですけど、クッキーがやばい。とにかくおいしい。このご時世、クッキーなんてコンビニでもどこでも買えるけど、ステラおばさんのクッキーは尖ってる。クッキーもお店の仕様も。
マーケティングなんてクソくらえ!といわんばかりの勢いで、経営多角化がデフォなこの時代に、クッキー一本ヤリで無双してるんですよ。
その強気の姿勢だけあってクッキーには外れがない。ステラおばさん邸を拠点とするクッキーモンスターに転職して、セサミストリートへの進出を目論んだけれども、そっこうで糖尿病を患うことを免れないおいしさなんです。
価格は高い。けれど食べてしまう。
ときどき「クッキーの詰め放題」という盛大な成人病推進イベントが開催されるらしいけれど、今度は僕も行ってしまうと思う。不退転の覚悟で、可及的速やかに婦女子に揉まれながら熱狂的に詰める。
グローバル経済が世界を飲み、IT技術の発展によって物流も大きく進展し、それを扱う企業は変容を迫られた。虚業ともいえるような利益を貪る大企業が多いなか、ステラおばさんのクッキーは燦然と輝く星です。クッキーの名前を使った屋号なんだからクッキー極めればいけるだろ、みたいな日本人的気骨を感じます。
母体の企業の名前は「㈱アントステラ」。も「㈱ステラおばさん」として熟女企業として邁進すべき転機にきているのではないでしょうか。
たしかにマーケティングの有効性は正確に測れない。だとしても。あの強気の価格を推すおばさんが、角野卓三さんや、はりせんぼんはるなさんに似ているのだけは悪手じゃないでしょうか。
そこは「ステラ」という名が、体を表すような。もうちょっと熟女を意識したルックスに変えるべきだと僕は思っている。そうすれば、飛ぶように売れるだろう。お岩さんのように、クッキーを一枚一枚ていねいに、しかもぼったくりで売っていても、すがすがしく買えると思う。